本をあまり読んだことのない人からすると、荒俣宏といえばバラエティ番組でときどき見かけるおっさんに過ぎないが、言うまでもなく日本屈指の書痴であり、妖怪研究家であり、知識人でもある大作家だ。
帝都物語は、間違いなくそんな彼の最大の代表作である。かつて文庫版を所有していたが、この足袋Kindleで再読した。
読んでみて驚いたが、最後に読んで十数年も経っていると、ディティールどころか話の筋立てすら忘れている。端々の情景には覚えがあるところからすると、写真印象的な形で読んでいたのかもしれない。
カタストロフ巨編を目にするたびに繰り返し問われていることだが、我々はなぜ都市を破壊したくなるのだろうか。ゴジラ、ウルトラマン、ヤマト、日本沈没、アキラ、エヴァンゲリオン。戦後から脈々と受け継がれている物語は、なんどとなく東京を壊滅させてきている。
それは、繁栄に対する贖罪なのか。それとも築かれてきた繁栄に不満を抱いているのか。はたまた、盛者必衰を謳う警鐘なのか。
東京出張の機会があったので、さっそく大手町にある将門の首塚を訪ねた。
皇居の直ぐ側、東京駅からもほど近い、巨大ビルの林立する都心のどまんなかに、首塚を祀る神社はある。都庁は新宿に有り、若者たちは渋谷を目指すが、やはり日本の最央部はここにあるのだと感じた。